「え、もうできたの?」
初めて生成AIで音楽を作ったとき、私は思わず口に出しました。
プロンプトを打ち込んで待ったのは、ほんの30秒ほど。気づけばスピーカーから、しっかりしたBGMが流れ始めていたんです。
驚きと同時に、なんだか少し怖さもありました。
だって、曲を作るってもっと時間のかかる営みだと思っていたから。ギターをポロンと鳴らしてから歌詞を考えて、メロディを探って、録音して…そんな「過程」をすっ飛ばして一瞬で完成してしまったのです。
この体験から、「人間の音楽って何だろう?」と考えるようになりました。
AI音楽の入り口は驚くほど低い
いまや「AI作曲ツール」と検索すると、SunoやUdioといったサービスが次々に見つかります。
どれも驚くほど手軽。音楽理論もDAWの知識もいらない。ただ「ポップで明るい曲」「ピアノ中心の切ないメロディ」と入力するだけで、それっぽい曲ができる。
私も最初は遊び感覚で試してみました。
「梅雨の夜に合うローファイBGM」と打ったら、しっとりしたトラックが流れ出したんです。
その瞬間、正直テンションが上がりました。「これ、もしかして自分の生活にいくらでも音楽をカスタマイズできるんじゃない?」と。
例えば日記を書くときのBGM、散歩するときのBGM、読書のお供のBGM…。
「自分の人生を、自分のためのサウンドトラックで埋め尽くす」なんて未来が、本当に実現しそうだとワクワクしました。
でも同時に「味気なさ」も
ただし、しばらくAI音楽を聴いていると、ふとした違和感に襲われます。
「どの曲も、悪くはないんだけど…心に刺さらない。」
私は高校時代、友人と文化祭でバンドを組んで演奏した経験があります。
……嘘ですごめんなさい、バンドを組んでたのは友人です。
私は楽譜すら読めない音楽知識なし人です。
で、その友人のバンドを演奏を見に行ったんですが、まあ下手くそでした。本人には申し訳ないですが。
ドラムとかギターとかの楽器の音量がデカすぎて、ボーカルが全然聞こえなかったんですよね。
でも、その場で聞いた音は間違いなく「特別」だった。今でもそう思います。
だって、どう下手くそだったとかどんな演奏だったとか、10年以上たって今でも覚えてるんですから。
AI音楽はきれいに整っている。間違いも少ない。
だけど「揺らぎ」や「破れ」がない分、どこか味気なく感じてしまうんですよね。
つまり、AIは確かに音楽を「生成」できるけれど、「生きた音楽」を作るのはまだ人間の役割なのかもしれません。
著作権とオリジナリティの問題
AI音楽には、著作権のグレーゾーンという課題もつきまといます。
ある日、AIに「ビートルズ風のロック」をお願いしたら、出てきた曲が妙に既視感のあるメロディで…。
「これ、大丈夫か?」と冷や汗が出ました。
人間の音楽は、模倣と革新の繰り返しで進化してきた歴史があります。
そもそも、ポップスのメロディはほとんどクラシックの焼き増し、なんて意見も聞いたことがあります。
だから、模倣自体は悪くないと思うんです。
でもAIの場合、その「模倣の境界線」があまりにあいまい。無意識に既存曲を再現してしまうこともある。
実際、海外ではAI生成音楽がSpotifyに大量アップロードされて問題視された事例もありました。
「オリジナリティって何だろう?」という問いが、ますます難しくなってきています。
依存と解放のはざまで
AI音楽を使っていると、もうひとつ不思議な感覚が湧き上がってきます。
「自分で作曲する意味、なくならない?」
私は趣味でDTMを少しだけやった(厳密にはやろうとしてできなかった、ですが……)ことがあるんですが、メロディが全然浮かばずに夜を徹したことがあります(だからそれっきりやってないんですが……)。
その苦しみすら、AIに頼めば解決できる。
便利なんです。でも、便利すぎて「自分で考える時間」を奪われてしまう気もするんですよね。
ただ逆に、「AIがベースを作ってくれるからこそ、人間は自由に遊べる」というポジティブな見方もできます。
AIが打ち込んだコード進行に、自分でギターを重ねる。AIが生成したメロディを、歌い直して自分の感情を乗せる。
そうすれば、AI音楽はむしろ「創造の解放」をもたらしてくれる存在になるんです。
そう、私のように楽譜すら読めない奴でも音楽を創造できるんです!
自信満々に言うことじゃないですよね、すみません……
余談:AI音楽をBGMに勉強してみたら
ここで余談をひとつ。
私は最近、AIで「集中力アップBGM」を作って勉強中に流してみました。
最初はいい感じに集中できたんですが、だんだん「単調すぎて逆に眠い…」と感じてしまい(笑)。
やっぱり市販のプレイリストや、人間が選曲した音楽には「緩急」があるんですよね。
そこに「あ、今ちょっと切なさが入ったな」「この曲調で気分が変わったな」と、感情を刺激する要素が潜んでいる。
AIの音楽は、まだその“仕掛け”が弱い。
でも逆に言えば、「こういう部分を強化すればもっと面白くなるのに!」とアイデアが浮かんでワクワクしました。
だから私は今、「AI×人間の共同作曲」がこれからもっと広がるんじゃないかと期待しています。
まとめ:AIがもたらす音の未来
生成AI音楽は、
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誰でも30秒で曲を作れる手軽さがある
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生活をカスタマイズするサウンドトラックを実現できる
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ただし「揺らぎ」や「生っぽさ」に欠け、味気なさもある
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著作権や依存の問題も抱えている
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でも人間が感情を乗せれば、AIは最高の相棒になりうる
AIは音楽を一瞬で生み出すけれど、人間の音楽は「心を揺らす」。
両者が出会うことで、これまでにない音楽文化が広がるのは間違いありません。
だから私は、AIを「脅威」とは思いません。
むしろ「自分の音をもっと自由に鳴らすための相棒」だと思っています。
次にあなたがAIで音楽を作るとき、どうか怖がらずに遊んでみてください。
そこから生まれる音は、きっとあなた自身をもっと豊かにしてくれるはずです。
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