生成AIに小説を書かせることについて、最初は正直そこまで期待していませんでした。
私はもともと小説を書く側の人間です。
16歳のころに初めて「小説家になろう」に投稿してみて、1話300文字くらいしか書けず、結局そのまま完結せずに止まったことがあります。
いわゆる「エタった」状態です。
その後、大学生のころにも少し書いて、10万字くらいまで頑張って、新人賞に出したこともあります。
たしかMF文庫J系の新人賞だったと思いますが、結果は一次選考でしっかり落ちました。
就職してからは、アルファポリスで毎日更新のような形で書いていた時期があります。
最終的には80万字以上の異世界転生ものを書きました。
よくある異世界転生、俺TUEEE系です。
ただ、おっさんが転生してハーレムを作るのも少しそのまますぎる気がして、主人公は女の子にしました。
魔物使いとして異世界で無双していくような話です。
そんな感じで、私は別にプロ作家ではありませんが、少なくとも小説を書くことにはかなり長く触れてきました。
だからこそ、生成AIに小説を書かせたときの感覚は、単なる「便利だな」では済みませんでした。
最初は、正直たいしたことないと思っていた
ChatGPTなどに最初に小説を書かせてみたときは、正直そこまで驚きませんでした。
「まあ、こんなものか」
「それっぽいけれど、別に自分で書いた方がいいな」
そのくらいの感覚でした。
ところが、しばらくしてからGeminiに自分の小説について相談してみたことがあります。
「これ、どう思う?」という感じで見せてみると、かなり的確なアドバイスを返してきました。
ここはこうした方がいい。
このキャラクターはこう動かした方がいい。
冒頭はこういう見せ方の方が入りやすい。
そういうことを普通に言ってくる。
そこで、少し意地悪な気持ちで思いました。
「じゃあ、お前が書いてみろよ」と。
別のチャットで、冒頭の設定だけを渡して書かせてみました。
すると、よくあるライトノベルの冒頭として、かなりきれいにまとまったものが出てきました。
しかも、ただテンプレをなぞっただけではなく、こちらが渡した設定の色も多少入っている。
自分が書いたものより、構成としてはきれいに見える。
文章も読みやすい。
これは、結構きつかったです。
自分が書いた文章より、AIの文章の方がよく見える瞬間がある
もちろん、自分が書いていないからよく見える、という面はあります。
自分で書いた文章は、書いている最中の迷いや苦しさを覚えています。
「この表現で合っているのか」
「この展開でいいのか」
「ここは読者に伝わるのか」
そう悩みながら書いているので、完成後に読んでも、自分の迷いの記憶が残っています。
逆に、数か月後に自分の文章を読み返すと、意外と「これ、結構面白いじゃん」と思うことがあります。
書いたときの苦しさを忘れているからです。
AIが書いた文章も、それに近い見え方をします。
自分が悩んで書いたものではないので、他人の文章として読める。
だから余計によく見える。
それを差し引いても、Geminiが出してきた小説冒頭は、普通に「これは読める」と感じました。
私はそれまでにライトノベルをたくさん読んできました。
その感覚から見ても、「これはなかなか良い文章なのでは」と思ってしまった。
この時点で、便利さより先に、少し嫉妬が来ました。
速度差があまりにも大きい
小説を書いてきた人間として、もうひとつきついのは速度です。
私は一般的な人と比べれば、小説を書く速度はかなり速い方だと思います。
本気で集中すれば、1時間で2500字くらいは書けます。
ただ、生成AIはその速度感が違います。
設定を渡して、「こういう小説を書いてください」と頼むと、数分で2000字から3000字くらいの文章が出てくる。
無料プランのAIでも、それくらいは普通に出してきます。
自分が60分かけるものが、AIなら3分で出る。
単純計算で20倍です。
しかも、誤字脱字は少ない。
文章としても破綻していない。
テンプレ的なライトノベルの冒頭としては、普通に成立している。
これは便利と言わざるを得ません。
そして、嫉妬せざるを得ません。
生成AIは「受けるテンプレ」を作るのがかなり強い
ここで大事なのは、生成AIが万能だという話ではありません。
長編小説全体の整合性を保つのは、今でも簡単ではないと思います。
チャット型AIにはコンテキストウィンドウがあり、一度に参照できる情報量には限界があります。
冒頭だけうまく書けたからといって、80万字の長編を最初から最後まで自動で綺麗に書けるとは限りません。
ただし、そこもClaude CodeやCodexのようなツールを使うと、かなり変わってきそうです。
たとえば、キャラクター設定ファイル、世界観設定ファイル、これまでのあらすじ、章ごとの進行メモを用意しておく。
AIには毎回それらを読ませながら続きを書かせる。
新しいキャラクターが出たら設定ファイルに追記する。
物語が進んだら、あらすじも更新する。
こういう運用をすれば、長編でもある程度の整合性を保ちながら書ける可能性があります。
つまり、生成AIは単発の文章生成だけでなく、「小説を書く環境」そのものに組み込めるようになってきています。
そして、特に強いのは「受けそうなテンプレ」を出すことです。
ライトノベルには、ある程度のお約束があります。
異世界転生、チート能力、ヒロインの属性、会話のテンポ、冒頭の引き、読者が期待する展開。
AIは、おそらくそうした大量のパターンをかなり学んでいます。
だから、こちらが強く指定しなければ、「みんながこういうものを期待しているよね」という方向に寄せてきます。
それは強みです。
少なくとも、「受けそうなアイデアを、受けそうな形で出す」という点では、人間よりAIの方が得意になっていく可能性があります。
では、人間が書く意味はどこにあるのか
ここで、当然こう思います。
「では、人間が小説を書く意味はどこにあるのか」
私の答えは、今のところかなりはっきりしています。
自分の癖が詰まったものを書くことです。
売れそうだから書く。
流行っているから書く。
ランキングに入りそうだから書く。
そういう判断で書くなら、正直AIに任せた方が強い場面は増えると思います。
AIはテンプレを外さず、読みやすく、速く出してくれるからです。
でも、自分の中にどうしても書きたいものがある。
このキャラクターだけは自分で動かしたい。
この関係性だけは自分の手で描きたい。
この設定だけは、自分の好きなものを100%詰め込みたい。
そういうものは、自分で書いた方がいいと思います。
なぜなら、生成AIには「この属性が自分にとって一番刺さる」という内側からの執着がないからです。
AIは、放っておくと多くの人が期待する方向に寄せてきます。
それは便利です。
でも、自分だけが異様に好きな要素、自分の偏り、自分の歪み、自分のどうしようもないこだわりまでは、勝手には入れてくれません。
そこを入れるのが、人間の仕事だと思います。
尖ったものは、売れないかもしれない。でも深く刺さる
「自分の癖が詰まったものなんて、売れないのでは」と思う人もいるかもしれません。
たしかに、広く売れるとは限りません。
むしろ、ランキング向きではないかもしれない。
でも、世の中には、自分と同じような偏りを持っている人がいます。
これは創作に触れていると、かなり実感します。
大ヒットしているわけではないけれど、自分には異様に刺さる作品があります。
なぜこんなに自分の好みに合う作品が存在するのかと思うことがある。
それは、自分と似たようなものを好きな人が、どこかにいるからです。
だから、自分の癖を100%詰め込んだ小説は、広く売れないかもしれません。
でも、一部の人には深く刺さる可能性があります。
そして、そういうものを書いているときが、たぶん一番楽しいです。
私も、売れるか売れないかを無視して書いたことがあります。
そのときの方が、書いていて楽しい。
「これは自分が好きだから書く」
「受けるかどうかは知らない」
「でも自分はこれを書きたい」
そう思えるものは、AIに任せず自分で書いた方がいい。
AIに任せるもの、自分で書くもの
だから、私の中での使い分けはこうです。
AIに任せてもいいもの。
- アイデア出し
- プロット案
- キャラクター案
- タイトル案
- 会話のたたき台
- 世界観整理
- 章ごとのあらすじ
- 受けそうな展開の提案
自分でやりたいもの。
- 本当に書きたい本文
- キャラクターの感情の決めどころ
- 自分の癖が出る関係性
- 作品全体の温度感
- 最終的な表現の選択
- 自分がどうしても制御したい部分
AIはかなり強い相棒です。
でも、自分が一番おいしいと思っている部分まで渡すかどうかは、別の話です。
私は文章を書くのが好きなので、理想を言えば本文は自分で書きたい。
ただ、すべてを自分で書こうと意固地になる必要もないと思っています。
自分の中で熱が冷めてしまったアイデア。
面白そうだけれど、今書いている作品が終わらないと手を出せない設定。
書かないまま眠っているプロット。
そういうものをAIに書かせてみるのは、かなりありだと思います。
もしかすると、自分が温めているうちに冷めてしまったアイデアが、実は面白い作品になるかもしれないからです。
ノベルゲームや挿絵まで含めると、さらに話は広がる
小説だけではありません。
生成AIは、文章だけでなく画像生成ともつながります。
実際、私は小説本文をもとに画像生成AIへ挿絵を作らせたことがあります。
本文中に書いたキャラクターの特徴や場面の説明を読み取って、かなり自然なカラー挿絵を出してきました。
これも、正直かなり衝撃でした。
小説を書く。
その小説から挿絵を作る。
さらに、キャラクター設定や会話を整理して、ノベルゲームのシナリオにする。
こういう個人制作環境が、少しずつ現実的になってきています。
全年齢向けのノベルゲームであれば、AIによるシナリオ案、会話案、挿絵、UI素材の補助はかなり使えそうです。
画像生成、自作HTMLツール、Claude CodeやCodexのような開発支援を組み合わせれば、個人でもかなりのところまで作れる可能性があります。
ただし、何をAIに任せて、何を自分で決めるのか。
そこを曖昧にすると、作品はどこか平均的なものに寄っていく気もします。
だからこそ、AIを使うほど、自分の癖や判断基準をはっきり持つ必要があるのだと思います。
まとめ:AIに勝つ必要はない。自分の偏りを捨てないこと
正直に言うと、私は生成AIに勝てる気はあまりしていません。
少なくとも、文章の速さでは勝てない。
読みやすいテンプレ小説を大量に出す力でも、おそらく勝てない。
挿絵まで含めた制作速度でも、勝てない場面は増えていくと思います。
でも、勝つ必要はないのかもしれません。
生成AIが得意なのは、多くの人にとってそれらしいものを高速に出すことです。
一方で、人間が持っているのは、自分でも説明しきれない偏りや執着です。
自分だけが好きだと思っていたもの。
売れないから書いても仕方ないと思っていたもの。
でも、本当は書きたかったもの。
そういうものを、これからはむしろ書いた方がいいのだと思います。
AIが一般的に受けるものを作れるようになるなら、人間はもっと尖っていい。
もっと自分の好きなものに寄せていい。
売れるかどうかだけではなく、「自分がこれを書きたいから書く」と言っていい。
私は、生成AIを小説を書く敵だとは思っていません。
ただ、便利な道具だとだけ言うには、少し強すぎる存在だとも思っています。
だからこそ、自分がどこをAIに任せ、どこを自分の手で書くのか。
そこを考えながら、これからも小説を書いていきたいです。

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