「AIの時代は半導体がすべてを決める」
そんな言葉を耳にする機会が増えてきました。
ちょっと大げさに聞こえるかもしれませんが、ChatGPTやSoraといった生成AIの裏側には、必ず半導体の存在があります。
もし十分な半導体がなければ、どれだけ優秀なAIモデルを作っても動かすことすらできません。
石油が20世紀の産業を支えたように、21世紀のAI社会を支えるのは半導体だ――。
そんな見方すらあるのです。
なぜ半導体が「AIの石油」と呼ばれるのか
AIが人間のように文章を書いたり、画像や動画を生み出したりできるのは、膨大な計算処理があるからです。
そして、その計算処理を担うのが半導体。
特に生成AIでは、GPU(画像処理装置)が中心的な役割を果たします。
もともとはゲームのグラフィック描画のために作られたGPUですが、並列計算能力の高さがAIにピッタリだったわけです。
私も趣味でStable Diffusionを試したことがあるのですが、持ち出し用のノートPCだと数分かかる処理が、自宅のGPU(グラフィックボード)搭載のゲーミングPCを使うとわずか数秒で終わるんです。
その違いを体感したとき、「ああ、これがAI時代の“燃料”なんだな」と実感しました。
市場を席巻するNVIDIAの存在感
半導体市場でまず名前が挙がるのは NVIDIA です。
生成AIブームで最も恩恵を受けた企業といっても過言ではありません。
NVIDIAのGPUは、AIの学習にも推論にも幅広く使われており、いまや「AI用半導体=NVIDIA」というイメージが強くなっています。
実際、同社の株価はこの数年で爆発的に伸びました。
私の自宅用ゲーミングPCにもNVIDIA製のGPUが搭載されています。
ただし、NVIDIA一強がずっと続くとは限りません。
Googleは独自のTPUを持ち、AmazonやMicrosoftもクラウド用のチップを開発中。
さらに中国勢も国家を挙げてAI半導体開発に投資しています。
「石油を握った国が世界を動かした」ように、AI半導体を握る企業や国が次の時代をリードする――そんな時代が来るのかもしれません。
半導体不足がもたらすリスク
ここで忘れてはいけないのが 供給不足の問題 です。
AI人気で需要が急増した結果、ハイエンドGPUは品薄状態が続いています。
研究者や企業が「GPUを買いたいのに入手できない」という状況も珍しくありません。
私も趣味でレンタルGPUサービスを試したとき、「予約がいっぱいで使えない」という経験をしました。
「時間をずらして深夜なら空いてます」と言われ、なんだか昔のネットカフェを思い出して笑ってしまいましたが……。
笑い話で済めばいいですが、企業レベルでは深刻です。
半導体不足はAIの研究スピードを鈍らせ、競争力に直結します。
知られざる環境負荷
半導体には、もう一つ見逃せない課題があります。
それが 環境負荷。
AIを動かすための計算処理は膨大な電力を消費します。
さらに半導体の製造過程では大量の水と化学物質が必要で、環境への影響も大きい。
「AIはクリーンな未来をつくる」と言われる一方で、その裏では巨大な電力消費と環境負荷がある。
このギャップをどう埋めるかは、今後の大きな課題です。
最近では、省電力性能に特化したAIチップの研究も進んでいます。
ただし「性能を追求すれば電力を食う」という宿命から逃れるのは簡単ではありません。
投資の視点から見る半導体
投資家にとっても「AI半導体」はホットなテーマです。
NVIDIAの株価上昇は象徴的ですが、他にもAMD、Intel、台湾のTSMCなど、多くの企業が注目を集めています。
また、GoogleやAmazonなどのクラウド大手が独自チップを開発していることも、今後の勢力図を左右します。
ただし、投資の世界では「ブームに乗る」だけでは危険です。
過去にも仮想通貨や5G関連株がブームになり、その後急落した例があります。
半導体市場も、短期的には需要不足や地政学リスクで揺れる可能性があります。
むしろ「長期的にAI社会の基盤を担う技術」という視点で腰を据えることが大事なのかもしれません。
日本の立ち位置
では、日本はどうか。
残念ながらAI半導体において、日本は世界の最前線から遅れているのが現状です。
かつては半導体大国だった日本ですが、今は台湾や韓国、アメリカに押されています。
ただし希望もあります。
政府は半導体産業を再興させるために「ラピダス」など新たなプロジェクトを立ち上げました。
まだ不透明ではありますが、日本が再びAI半導体で存在感を示せるかどうかは、これからの数年にかかっています。
まとめ
生成AIの進化を支えるのは半導体。
その重要性から「AI時代の石油」と呼ばれています。
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GPUを中心に需要が爆発し、NVIDIAが圧倒的存在感を発揮
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一方で供給不足や環境負荷といった課題も大きい
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投資対象としても注目されるが、短期的なリスクも存在
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日本は出遅れているが、再起を目指す動きもある
結局のところ、AI社会のスピードと方向性は半導体にかかっています。
石油のように「持つ者が世界を動かす」時代が来るのか――。
私たちは、その分岐点に立っているのかもしれません。
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